「乱」 黒澤明監督

Amazonプライムビデオで、黒澤明監督作「乱」(1985年公開作品)を見ていました。

(もうすぐ見放題が終了なのだそうです。)

「乱」は架空の戦国大名家の家督争いの物語です。

シェイクスピアの『リア王』を題材にしているということで、主人公の戦国大名・一文字秀虎は子に家督を譲った後、子に裏切られ国を追われ失意のうちに死んでいくというストーリーとなっています。

評価の高い映画と思いますが、インターネットで検索しますと、Yahoo!映画では3.8/5、映画.comでは3.6/5という評点となっており、ものすごい高評価というわけでもないようです。

低い評点をつけている方のコメントを見てみますと、

  1. 七人の侍や羅生門といった黒澤明のかつての作品に比べると見劣りがする。
  2. 題材としているリア王の内容を改悪してしまっているでは?
  3. 舞台演劇的な台詞回しに違和感を感じる。

といった感じになっていますが、1. 2. については致し方無いかなというふうに思います。これはもう致し方ないとしか言いようがないのです。

それで「乱」が面白い映画かどうかをいいますと、面白い映画です。

子供の頃、テレビで1度見ましたね。そのときは内容についてはよく理解できていなかったと思いますが、美しい映像だなあと思いました。

162分という長い映画ですが、その2時間半以上の時間をずっと飽きずにみてしまいます。

なぜ飽きないのかといいますと、映像の「動」と「静」、音響の「動」と「静」が非常に印象的であるからだと思います。

例えば、長男・太郎が討ち死にするシーンでは、戦闘の凄惨な映像と不穏で静かなオーケストラの音楽が続き、太郎討ち死にとともに音響はオーケストラの音から突如、鉄砲の発泡音に変わり、映像は一面が白煙に包まれる。

(そしてその後、次男・次郎とその部下である鉄修理のとぼけた会話のシーンが挿入される。)

「乱」という映画では、凄惨なシーンですら美しく感じられます。狂気にとらわれた一文字秀虎が荒地を駆けていくシーンも美しいと感じます。全編を通して美しいです。

物語は因果応報と人間の善悪の連鎖のようなことが描かれていきます。

もし、鉄修理が最初に命じられたときに末の方を殺していたら、

もし、鶴丸が笛を忘れていなければ、

もし、末の方が鶴丸を連れて逃げなければ、

・・・といったことを考えてしまいます。

一文字家と、一文字家に怨みを抱く楓の方の物語ですが、それらすべての人間が最終的に死にます。

鶴丸は決して本編において重要な役回りではありませんが、しかしこの映画は、死んでいく者の悲劇ではなく、取り残された鶴丸の「哀れ」が最大の主題となっているのだろうと思うのです。